ひとこと 本文へジャンプ
会長のひとこと


12年前の春合宿

会長の日々思うこと、山の話、道具の話等、毎月更新しています。

 山岳会に籍をおいて丁度12年が経つ、10月に入会し翌年のGWが最初の春合宿であった。
まだ、入ったばかりで右も左も分からず、春合宿は空木岳縦走ですと言われて本当にのこのこついて行った感じだ。何しろ空木岳が何処にあるのかもわからず、調べもしなかった。本当に他力本願で所謂連れて行ってもらうという典型であった気がする。
 とりあえず初めての中央アルプスで千畳敷までのロープウェイもなんだかドキドキして乗った記憶がある。ロープウェイを下りたところは一面の雪の世界、5月上旬というのにここにはまだ冬が残っていると感じた。
 天候にも恵まれて8人ほどの団体で稜線に向かって歩き始めて、暑いくらいである、いい天気だなとのんきに歩いていた記憶が残る。
ところが稜線に出ると風がとんでもなく強く、段々雲も多くなり、なんだか先程の天気とは打って変って怪しい雲行きだ、それでも登山道なので迷うことはないと高をくくっていた。ところが今度は雪が降り始めた、それだけでなく、段々視界も怪しくなり、最終的にはホワイトアウトになって目の前の登山道するよくわからなくなってきた。それでも自分は後に着いていくだけとメンバーの真ん中あたりをまだ能天気に歩いていた。
 なんか迷ったようだと怪しいお言葉が飛び交ってきた、何処にいるのか現在地がわからないとのこと。今の様にジオグラフィカなどないし、地図はあるがそもそもホワイトアウトしていて視界がゼロである。気が付いてみれば近くに他の登山者も居ない。もしかして遭難!?という文字が頭に浮かんできた。山岳会で来ていてそんなことないよねと思いつつ、さてここは何処でしょうかという回答を誰も持っていずに右往左往、とそのうち、リーダーが多分現在地はこの辺だろうと想定し、そうするならば、避難小屋がこの稜線を下りたところにあるはずだと言い始めた。しばらく議論が続いたがやはりリーダーの言うことが正しいのだろうし、それ以外の行動は考えられなかった。
 稜線から外れてしばらく急斜面を下る、もし間違っていたらこれを上り返さなければならない、不安と焦る気持ちが交錯しつつも、ここは避難小屋に掛けるしかないと感じた。雪も風も収まるどころか先程にも増して激しくなっている。
 想定通り避難小屋がありました、流石にリーダーはちゃんと地図をよみこれ以上の登山は危険と判断し、避難小屋に行くことを決定した素晴しい判断であった。避難小屋では一晩中猛烈な風が吹き続け、これがもしテントであったならとぞーっとした。翌朝はすっかり天気も回復してその避難小屋から空木岳が見えていた。後から知ったことだがその日の工程の半分も行ってなかったようである。

 登山をするということは遭難するというリスクがいつも付いて回る物である。だからこそ、天気をよく確認し、天候が崩れないか否かの判断をし、地図を持ち、ちゃんと読図をして道迷い等のリスクを無くさなければならない。それと体力、体力が無くなり動けなくなるような無理な工程はさけ、余裕を持った行程での登山を計画する必要がある。もちろんリーダーがその辺を判断するが自分自身でも自分の体力を考えて無理があれば工程を見直してもらう必要がある。なので登山計画書はとても重要で事前にその登山のシミレーションを行い自分の体力で問題ないか否かの判断が必要になる。

 登山をする、それは事前にその山を工程を計画し、天候も考慮し、自分の体力で行ける範囲での所となる。それを考慮せずにただ参加するというのではあまりにも山をなめていると思う。自然はとても素晴しい景色を感動をもたらすが、時には人間など容赦なく叩きのめす脅威がある。そんな自然を登山を安全で楽しく実施し、山の頂きを目指したい。(古橋)